1.十九才 大学二年生 春

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 好きだとか綺麗だとか、ユキは本当に、素直に言っているように聞こえる。  もしかしたらユキは無自覚なんだろうか。  普通に考えたら口説かれているかと思う。  あるいは、ユキが言うのじゃなかったら、俺は、馬鹿にされていると思うかもしれない。 「隼のことも、かがりのことも、とても綺麗だと思うんだ。それは、何が綺麗かというと、姿勢と態度の中間みたいな感覚なんだけれど」  Posutureと、ユキはノートに書いて見せた。 「たまに、感覚を当てはめる言葉が適切に見付からなくて、困ってしまうんだ。とにかく、綺麗だと思う。隼のこと、すごく素敵だと思うよ。だけど、それは僕にとっての事実だということを証明することはとても難しい。事実は意見の積み重ねで出来ている」  俺はユキの目をのぞき込んだ。  ユキの目の中に俺が映っている。  読書灯の明かりで顔の半分だけが照らされた俺自身を、ユキの目の中に見付ける。
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