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「すごいね」
ユキがのまれたような様子で感想を口にした。
「これは、こういうダンスのジャンルなの?」
タブレットの中で、逆立ちをしたかがりが高い位置でボールを放すと、今度は俺がボールの下に入り込む。
床に転がり、先ほどのかがりと同じ動きをくり返す。俺の方が動きが大きいけれど、かがりのような、つま先まで行き届いたような完成度には遠い。
俺の逆立ちを見て、ユキはため息をついて、首を振った。
「すごい。僕がこんなことをしたら、首の骨を折るよ」
俺はユキの、男にしては細くて長い首を見やる。
かがりと同じくらい白い肌をしている。自分の好みってやつが、分かりやすいなと思う。
動画は一分ちょっとで終わる。実際やってみると分かるが、一分間動き続けるというのは結構長い。
途中、二人立ち上がって、背中合わせにボールを回し合ったり、かがりがボールを膝で挟んで隠してしまい、俺が探す、というコミカルな場面も入る。
アドリブに見えるけれど、実は何度も練習した。
最後は俺の股の間をかがりがボールを奪いながらくぐり抜けて、逆立ちしてボールを俺に手渡して、フィニッシュ。
画面の中に、見つめ合うかがりと俺が永遠に残されている。
踊り終えたあとの数秒間。
あれは永遠だった。
あの時間を、かがりとふたりだけで省みるのが怖い。
見終えて、ユキが賞賛の言葉を述べた。
信じられないくらい素晴らしいと。
かがりは目を細めて俺の背に顔を寄せた。
「懐かしいわ」
「いつの動画なの?」
ユキが問う。
「隼と初めて会った日に撮ったものなの」
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