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かがりはリフティングを教えて欲しいと言った。
言う、というか身振り手振りでそう示した。
その午前中いっぱい、俺はかがりにリフティングを教えて過ごした。
サッカーボールがかがりには重すぎるのではないかと思ったが、杞憂だった。
よく伸びた膝裏と、しなやかな足首。かがりは上達が早かった。教えるのが楽しいと思えた。
昼休憩では講師も一緒にみんなで輪になって昼食をとった。こんなことも、おままごとくさいと思ったが帰りたい気持ちはなくなっていた。
不格好なおにぎりを子リスみたいにかじっているかがりから、目が離せなくなっていた。
一目惚れ、というのがあるとしたら、その瞬間を覚えている。
午後の講義の開始直後、かがりはサッカーボールを腹にのせて、床に寝そべってみせた。
光沢のあるパールホワイトのジャージの上下。体育館の床に広がった黒い髪。
一呼吸、のち、跳ね上がるサッカーボール。
かがりは完璧だった。
全身を使って見事にボールを操って見せた。
それはどちらかといえばサッカーというより新体操の床競技に近かったのかもしれない。
魅せる、ということにかがりは無自覚なまでに野性的だった。
逆立ちで、膝でボールをキャッチし、バク転で立ち上がった後、かがりは俺の目を真っ直ぐに見た。
髪がひと房、汗でおでこに張り付いていた。
その目で、かがりは俺を撃ち抜いた。
大きな問いかけるような目だった。
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