2.十九才 大学二年生 春(十八才の回想含む)

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「講師の先生が、撮影した動画をくれたんだ。ここ数年で一番すごい出来だったって誉められた」 「この日初めて出会って、この日初めてダンスを合わせたの?」  ユキは何度も事実関係を確認した。  事実関係、と表現するユキの重々しさが、彼らしい。  運命的だね、とユキは感想を口にした。  運命的に出会った二人なんだね、と。  ユキの言葉は本当に聞こえる。嘘が無さそうに。  本気で感激でもしているふうに。  運命だと思った。  言葉無しで通じ合える。かがりと動きを合わせることに、夢中になった。  心底楽しいと、時間を忘れるくらい、かがりと遊ぶのに夢中になった。単位のことなんて忘れていた。  誰の目も気にならなかった。  空が広かった頃の感覚。  夕暮れ時の芝生の上で、疲れることも無く自分に吸い付いてくるサッカーボールみたいに。  永遠に二人きりでいたいと思った。 「この日、隼は、わたしが何をやりたいか分かってくれたの。とても辛抱強く待ってくれたの。そういうひとは初めてだったの」  かがりの言葉もまた、とても素直に響く。  時間をかけてかがりの咽と舌を通過して出てくる言葉。小さな小さな声が波紋のように優しく響く。  かがりは、言葉を軽んじているから言葉が出せないのではない。  考えて考えて、濾過されて出てきた一滴を受け止めてくれる相手を待っている。  それはユキのような人間なのかもしれない。  かがりとユキは似ている。最初にユキと話をしたのも、俺ではなく、かがりだった。  言葉無しで、身体でわかり合えると、でもそれは幻想だった。 『とても辛抱強く待ってくれた』とかがりは言った。  かがりが求める俺と実際の俺とは違う。
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