3.十八才 大学一年生 春から夏

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 かくれんぼをしよう、とかがりに誘われたあの日。  初めて部活をさぼった。サッカーよりも他のことを優先したことなどなかった。  かがりは校舎の外へ走り去っていった。だから校舎の外回りやグラウンドを探した。  見付からないので、学科棟に戻って教室を一つ一つ見て回り、立ち入ったこともない研究棟にまで入ってみた。  何をしているのか、させられているのかと戸惑った。からかわれているのだろうかと考えた。  かがりの深刻そうな顔を思い出すと、見付けてやらなくては、とも思った。  もう一度グラウンドに出て、第二グラウンドまで足を伸ばした。主に陸上競技が行われる方だ。  いい加減疲れたし、探すのをやめたいと思った。  暑くて咽が乾いた。  それなのに何故か、何も飲まずに探し続けた。熱に浮かされた人のように。  足を止めてはいけない気がしていた。  グラウンド脇に古びた体育倉庫を見付けた。  近付いてみると倉庫は思いの外大きかった。  錆の浮いたスライド式の鉄扉がわずかに開いているのを認めた。  隼、と呼びかける声に我に返った。  夢の中を歩いているような気さえしていた。  隼、と思い返せば、あの頃のかがりにしては、はっきりした声で、呼びかけてきた。  倉庫の最奥にかがりは、いた。  倉庫の奥に長机やコンパネの上にブルーシートが折り重なっていた。  ブルーシートの間からのぞいた顔と手。  かがりをブルーシートから引っ張り出すときも、やはり、夢の中を動いているかのようだった。  かがりの手は熱かった。  ぐったりした顔を見て、なぜここまでしてと怒りさえ覚えた。  俺を振り回す女、という存在に慣れていなかった。  振り回されて翻弄されて、揺り動かされる心。  冷静に振り返るだけの余裕はなかった。
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