3.十八才 大学一年生 春から夏

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 倉庫の中で、かがりに最後まですることは出来なかった。かがりは泣いた。泣き声を立てずに泣いた。怯えていた。  泣いて助けを呼んでいた。俺の名前を呼んでいた。 「隼、たすけて」  わたしを見付けて、と望んでいたかがりを俺は見付け出した。  見付け出して傷付けた。  俺はかがりに謝らなかった。  かがりは俺に謝った。  部活をさぼらせちゃってごめんなさい。  探させてしまってごめんなさい。  かくれんぼに付き合わせちゃって、ごめんなさい。 「わたしを、嫌いにならないで」  震えながら謝るかがりにジャージを着せ直し、大学の保健センターに連れて行った。  かがりは熱中症と言われて白いベッドに横たえられた。  かがりは、暗闇にいることや一人にされることを怖がる。それは以前からなのか、このかくれんぼがきっかけなのか、俺には分からない。  臆病で尋ねることができない。
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