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4.十九才 大学二年生 初夏
最初にボタンを掛け違えたまま、かがりを抱くことが出来ない。
もう、ずっと。
何度か試した。
試したいと懇願すると、かがりは拒否しなかった。
それなのに、かがりの身体は俺を拒否する。強ばった肢体、噛みしめられて血がにじんだ下唇。
かがりの上半身は俺にすがりつく。
助けを求めるかのようにかがりは俺の首にしがみつく。下半身は冷たいまま反応しない。
幼さの残る胸、鍛えられた太腿。
太腿のつけ根を撫でてかき分ける。
粘膜はふっくらとして湿り気がある。温かく湿った粘膜に俺の中指が触れる。
そこに入りたくてたまらない。
何度か試した。
粘膜は潤っている。口の中と同じように、通常の状態では適度に潤っている。
最初はそのことも分からなかった。性的に感じているのではなく生理的に潤っているだけなのだと知らなかった。
挿入しようとすると、かがりの粘膜はひきつれて乾き、俺を拒絶した。
濡れない冷たい身体は宗教画のように美しい。
唇を噛んだ横顔は殉教者みたいだ。
ひと言も発さず、使命に耐えている。
このまま首を絞めて犯してしまいたい。
なぜ俺のものになってくれないのだと、問い詰めたい。
快感でなくてもいい。
俺に貫かれて泣き叫ぶかがりが見たい。
泣いて叫びたい自分の口を自分で塞ぐ。
脈を打って、痛いほど張り詰めた自分の性器が、凶器にしか見えない。
俺はかがりを抱き寄せて耳に口付ける。
自分の膨れ上がった欲望をかがりから引き剥がす。
最大限の努力で引き剥がし、押さえ込む。
かがりの冷たい身体に比して、自分のものは滑稽でグロテスクで、惨めだ。
いっそ去勢でもしてしまえばいいんだろうか。
そうしたら、かがりとずっと一緒にいられるんだろうか。
「おやすみ」
かがりにそっと口付けを贈る。
かがりの目がやっと俺を映し始める。
「おやすみなさい」
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