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毎晩、髪を乾かし合って、抱き合って、ついばむようなキスをして眠る。
おままごとの夫婦ごっこをしている。
俺が、試したいと言わなければ、かがりは安心しきった顔で眠る。
キスが深まりそうになると、かがりは肩を強ばらせる。
かがりは踊るときに肩に力を入れない。
腕を支えるのは体側の筋肉だ。肩甲骨まで使って柔らかく腕を動かす。
俺のキスはかがりに踊りを忘れさせてしまう。
がちがちに強ばって、恐怖で浅い呼吸をくり返す。
発汗している。
交感神経が急激に優位になる。
動物が天敵に出くわしたときの反応だ。
逃げるために。あるいは反撃するために。
俺はかがりの敵になりたいんじゃない。
眠るかがりの隣から抜け出して、台所に逃げる。
母親も時々夜中に台所に立っていた。
深夜に包丁を使っている母親の背に、声をかけることが出来なかった。
自分がいつか、かがりを殺してしまうんじゃないかと怖くなる。
運命だと思っている。
かがりのことが好きだ。受け入れて欲しい。
かがりの身体に拒絶される度にどす黒い感情に支配される。この感情に合う言葉を見付けるのが怖い。
はっきりと物事が見えるなんて恐ろしい。
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