60人が本棚に入れています
本棚に追加
ユキの顔を思い浮かべる。
図書館で、俺に会えて心底嬉しそうな顔をしていた。
好きな女がやらせてくれないのだと頼み込んだら、ユキは突っ込ませてくれるんだろうか。
無理矢理に犯しても、俺のことを綺麗だの素敵だの言い続けるんだろうか。
男が相手なら浮気にもならない。
受け入れて欲しい。俺を眠らせて欲しい。
最低だ、と自分でも思う。
なぜユキのような人間でいられないのだろう。
部屋の中で衣擦れの音がした。かがりの細い悲鳴。
居室から台所に繋がるちゃちな扉が恐る恐る開かれる。
ショートパンツから伸びたしなやかな脚。美しい足の甲。かがりが俺を認めて抱きついてくる。
「起きたら、ひとりだったの」
大丈夫だよ、とかがりを抱きしめる。
大丈夫、どこにも行かない。
かがりの髪の手触りは俺を夢中にさせる。髪の中の耳を探し出して口付ける。大丈夫だよ。
かがりはひとりぼっちにさせられるのを怖がる。異常なぐらい怖がる。特に暗いところが苦手だ。
だから、かがりは俺から離れられない。
ユキのようになれたらいいのに。
素直に素朴に、好きなんだとかがりに伝えることが出来たらよかったのに。
最初のコメントを投稿しよう!