5.十九才 大学二年生 梅雨

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5.十九才 大学二年生 梅雨

 六月の最終日、定期テストが終わり、明日から夏休みが始まるという日。  今夜ユキに遊びに来てもらおう、と言い出したのはかがりだった。 「夏休みが始まったら、ユキに会えなくなっちゃうものね」  朝ごはんにカッテージチーズを食べながらかがりが俺に提案した。  今夜来てもらって何をする、というプランがあった訳ではなかった。  ユキがこの部屋に踏み入れる、というのは奇妙な気もした。かがりと二人きりで夜を過ごさなくていいのだ、と思うと安堵も感じた。  夜ごと自分の欲望に向き合い続けるのに疲れていた。  テスト後の部活では、久しぶりに良く集中出来た。  良いときは、自分を頭上から俯瞰で見られるような気がする。  緊張と集中がぴたりとハマったときには、時間を操れるような気さえする。  ロッカー室でシャワーを浴びて、チームメイトとも、他の部の男たちとも、軽口を叩く。 「隼は、まだ、かがりと続いてんの?」  お前、すぐ飽きるとおもってたわ、とそいつが言う。 「飽きない」  簡潔に答える。  剥がし忘れた足指のテーピングを、剥がして捨てる。  新しいソックスを履く。生乾きの髪のまま荷物を持つ。  飽きるのは、俺と写真を撮って、吐きそうに甘いスイーツの写真を撮って、その後はずっとSNSの中に没頭している女の子たち。  俺のことを新しいネイルチップやカフェの新商品か何かと同じポジションで扱ってくる女の子たち。  俺は消費されたいんじゃない。  飽きられる前にこちらから切り捨てていた。  そんなふうに女の子たちを消費した罰を、今、受けている。
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