1.十九才 大学二年生 春

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 日焼けをしていない頬はつるりとしている。  自分とは違う。  ユキは勉強が好きなんだろう。  確か、生物系の勉強をしていると言っていた。それくらいのことしか知らない相手に、会いに来てしまった。  放課後はだいたい図書館にいる、と聞いていた。  今日確実にユキがここにいるとも分からなかったのに。  ユキは粘菌の話をしていた。  捕食器官と排泄器官と生殖器官が渾然一体となった生物だと言っていた。得体の知れない生物だ。  でもその話を聞くのは、退屈でも不快でもなかった。  そんな得体の知れないものに夢中になれるユキがうらやましいと思った。  ユキのまつげが金色になったり黒になったり、時々しかめ面をしたり、口元に手をやったり。  その様を見ていると、不思議と落ち着いた気持ちになってきた。  どうやったらユキがこちらに気が付くかな、と考える。図書館で大きな声を出すわけにもいかない。    スマートフォンを取り出すと、母親からの着信履歴をまず削除する。遅れてきた思春期みたいで苦々しい。  ユキにメッセージを送った。 『正面にいる』  初めてユキに送るメッセージだ。  教職課程の授業が一コマ被っている。よく考えたらそれだけの相手だ。  連絡先を交わしたものの、何もやり取りをしたことはなかった。
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