白く塗る

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「隼。触って、ほしい」    息も絶え絶えに、かすれた声で俺を求める。  そんな姿はかがりと一緒だ。  かがりの欲情する姿は花びらを散らすような、どこか、罪悪感を呼び起こす。    ユキの懇願する姿はどこまでも支配欲を呼び覚ます。  ローションでぬめった手で、自分のものとユキのものをひとまとめに包み込む。  ユキが喘ぐ。  もっと鳴かせたい。にちゃにちゃとローションが卑猥な音を立てる。  ユキに手をつかせる。浴室の鏡に。  自分でも呆れてしまうくらい、この行為に溺れている。  腰を突き出させる。太腿を閉じておけと命じる。  ユキを背後から抱きかかえるようにし、ユキの太腿の間に、自分の昂ぶりを擦りつける。時おり、自慰のように、ユキのものと自分のものを一度に包んで刺激する。    自慰は好きじゃない。  肌がぶつかりあうのが良い。  ユキの腰に打ち付けるようにすると、セックスしているのと変わらないのではないかと思えてくる。  挿入を伴わない男同士の行為をバニラセックスというのだと教えてくれたのはユキだった。  甘ったるいなと思う。  アイスクリームを舐め合うみたいな。傷を舐め合うみたいなセックス。  排泄みたいな一方的なやり方で構わないと思っていたのに、いつの間にか、甘ったるくて終わりがないみたいな行為に溺れている。  鏡越しにユキと目が合う。  目を逸らすなと命じる。  背骨を舐め上げると、ユキの性器がわななくように震える。 「ユキは俺が好きなんだろう? 目を逸らすなよ」  わたしのこと好き? と問われるのが苦手だった。  女の子は嫌いじゃない。  でも挿入してしまえばみんな一緒だと思っていた。胸の形がちょっとづつ違うだけ。  喘ぎ声が大きい子は苦手だった。好きな匂いだなと思う子も、そうでない子もいた。    かがりには聞けない。  俺を好きなのかと。あの大きな瞳がほんとうに俺を求めてくれているのか、怖くて聞けない。
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