くノ一学園

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くノ一学園

「フフゥン、ご覧なさい。この教室を。ここはいわば伊賀の影丸の陣地(テリトリー)なのよ。どこから伊賀忍者の手裏剣が飛んでくるか、わからないじゃん」  咲耶は教室内をグルッと紹介した。 「いやいやッ、ボクは伊賀野藤丸ですって。伊賀忍者とは縁もゆかりもありませんから。そんなに用心しなくても大丈夫ですよ!」 「お黙り。影丸の御託など、はじめっから聞く耳は持たないわ。この先、いつどこから伊賀忍者が襲いかかって来るのかわからないのよ」  咲耶は、どうあっても自説を曲げないみたいだ。 「えェ……?」  ようやく咲耶の化粧直しも済んだ。さっそく自撮り棒でライブ配信をしながらアイドルのようにピースしてポーズをつけた。 「そんな伊賀忍者なんて襲って来ませんよ。頼みますから自撮りしてないで、大人しく授業を受けてください」 「フフゥン、わかっているのよ。伊賀の影丸」 「いやいや、何度も言いますがボクは伊賀野藤丸ですよ。忍者でも影丸でもありませんから」 「ふぅん、そう言って咲耶を油断させて、こっそり寝首をかく算段なのね」 「あのですねえェ。ボクは伊賀忍者じゃありませんので、そんな寝首をかくような危ないことはしませんよ。安心して授業を受けてください」 「ふぅん、おバカさんなの。爺やは」 「なッ、なんでボクがおバカさんなんですか」 「伊賀忍者が(みずか)ら忍者だと公表するはずがないであろう」 「えェ……?」 「伊賀忍者はソフランのように優しく敵の(ふとこ)ろに(しの)び込んで油断させ、敵の寝首をかくのが常套手段なのよ」 「いやいや、そう言う咲耶(サク)ちゃんだって甲賀忍者なのに、忍ばない女忍者(くノ一)なんでしょ」 「フフゥン、忍ばない! 甲賀忍者の咲耶はまったく別のカテゴリーなの」 「えェッ、何それ。別のカテゴリーって?」 「良いこと。咲耶はこれまでの影に忍んで、隠密行動を取る忍者とは一線を画すニュータイプなのよ。まったく新しいニュージェネレーションの忍者なの」  また咲耶は自撮り棒で撮影を始めた。 「いやいやァ、どんなニュータイプですか。だいたいニュージェネレーションの忍者って何なんですか」 「フフッ、さァ、衣裳チェンジが済んだら、ライブの続きをぶち上げようかしら」  咲耶は勇ましく立ち上がった。 「おッ、おおおおォォォーーーッ」  途端に男子生徒らも呼応しスタンディングオベーションだ。 「いやいやァ、ぶち上げるな。ライブの続きなんて」  また教室がパニックになるだろう。
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