第1章 条件はそれ?

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一瞬のうちにそんな考えが浮かんだ。 Mr.Aは広げていた新聞を素早く畳み、立ち上がった。 ボーイさんはサッと一歩横に寄り、元いた位置に戻って行った。 その背筋の伸びたスマートな動作に感心してしまう。 彼らはこのようなシチュエーションにきっと慣れているのだ。 ちょっぴり、自分が普段と違う特別な人間になったかのような錯覚が起きた。 向かい合った私たちはお互いに軽く会釈した。 相手も写真と現物のが同一人物と見定めたのか、大きく頷いた。 「行きましょう」 ゆっくりと歩き出した。 おお、人生初のお見合いがスタートする! 『会話の期待値が30%』と思ったけど、その人の背中を見ながらどこかエキサイトしてる自分が面映(おもは)ゆい。
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