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『典型的な金持ちおやじと若い愛人か......』 陸は苦笑いをしながら酒を作り終えると、 卓也が用意したトレーに載せた。 「ありがとうございます」 卓也は、トレーに載せたジントニックとモスコミュールを 早速客の元へ運ぶ。 そして、 「お待たせいたしました」 と言ってテーブルに置いた。 「ごゆっくりどうぞ」 卓也はそう言って一礼すると、 カウンターへ戻った。 その時、店内に大きな声が響いた。 その瞬間、他の席にいた客達が一斉に振り返る。 「ふざけるなっ! なんの為にお前に毎月50万もの手当てを払ってると思ってるんだ! 馬鹿にするのもいい加減にしろっ!」 「でも、もうやめたいの」 「ハッ? まだ三ヶ月しか経ってないだろう? 何を考えてるんだ! こんな事ならお前みたいな銀座のクラブの下っ端より、ママにでも貢いだ方がよっぽどマシだったな!」 男はそう言うと、ジントニックをがぶ飲みする。 そして、続けた。 「俺はもうお前の我儘にいちいち付き合っちゃあいられないよ! だから愛人契約はこっちから白紙に戻してやるわっ! その代わりな、今月分の50万は返してもらうからな! 明日中に俺の口座へ振り込んでおけ! あ、あとな、マンションも出て行け! お前があそこへ住む事はもう今日から許さないからな! 引っ越し先が決まったら連絡しろ! 荷物はその時まとめて送ってやる!」 男は吐き捨てるように言うと、女性の前に手のひらを差し出した。 どうやらマンションの鍵をよこせという意味らしい。
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