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そんな時、先ほどの野崎幸夫が、
華子に愛人契約を持ち込んで来た。
野崎はクラブの常連客で、いつも華子を指名してくれた。
年齢は華子よりもだいぶ上で、外見もパッとしない男だったが、
金回りは凄くいい。
クラブ内の噂では、野崎は親から引き継いだ会社を複数経営し、
クラブの常連客の中では、かなり上位に入る上客だと言われていた。
野崎は華子に、月50万の手当てを約束し、都内に所有している高級マンションに無償で使っていいと言ってくれた。
切羽詰まり喉から手が出るほど金が欲しかった華子は、
その申し出を受ける事にする。
割り切って愛人をしつつ、陰でハイスペックな結婚相手を探せばいい。
愛人になれば、あの恐ろしい夜の世界からは抜け出せるのだ。
そんな軽い気持ちで野崎の愛人になる事を決めたが、
いざ愛人になると、様々な憂鬱が華子を襲うようになる。
『愛人=自分の気分を常に良くする存在』と思っている野崎は、
華子に対し『常に俺の前では愛想良くしろ、俺を敬え』と言う。
華子のこれまでの交際経験では、常に華子が優位に立っていた。
だから、自分から男性のご機嫌取りをするなんてした事がない。
華子がそれまで付き合って来た男性達は、
皆それなりに爽やか系のイケメンばかりだ。
外見に全く魅力のない野崎に対し、敬えと言ってもかなり無理がある。
表面だけで無理して敬うふりをしても、
元々感情が顔に出やすい華子の演技は、すぐにバレた。
そして、そこから野崎の説教が延々と始まるのも苦痛だ。
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