3679人が本棚に入れています
本棚に追加
/348ページ
『何の努力もしなかった私には罰が当たったのね』
華子は力なく笑う。
『なんか疲れちゃった......死んだらリセットって出来るのかな......』
そう考えた瞬間、華子の足取りは急に軽やかになる。
そして華子の足は、意志を持ったように『そこ』を目指した。
それを見ていた陸は、嫌な予感しかしなかった。
華子はフラフラと吸い込まれるように踏切の遮断機へ近づいた。
そして、次の瞬間その遮断機をくぐり抜けると、
電車が来る線路の上まで歩いて行き、
突然両手で耳を塞いでその場にしゃがみ込んだ。
その動きには、強い決意が感じられた。
それを見た踏切の向かい側にいた女性が、大きな叫び声を上げた。
「キャーッ! やめてーっ!」
カンカンカンカン.......
踏切の警報音は鳴り続けている。
その時、電車の音がして快速電車が勢いよくこちらへ走って来るのが見えた。
踏切手前の線路はカーブになっているので、
運転手はまだ華子に気づいていない。
最初のコメントを投稿しよう!