2

14/14

3680人が本棚に入れています
本棚に追加
/348ページ
その瞬間、陸は走り出した。 緊急停止ボタンを押してももう間に合わない。 陸は遮断機を軽々と飛び越えると、 踏切内でうずくまる華子を抱き起こし、乱暴に肩に担いだ。 そして素早く電車が来ない方の線路へと移動する。 死を決意していた華子は、その瞬間何が起こったのか分からなかった。 気づくと、自分は誰かの肩に担がれている。 その時電車が、 「ファ―――ンッ、ファア―――――――――ンッ!」 と、長い警笛音を鳴らし続けた。 しかしブレーキはかけずにそのまま通り過ぎて行く。 間一髪だった。 先程叫んだ女性は、ホッとした様子で二人の方を見ていた。 陸は華子を担いだまま遮断機の手前まで行くと、 華子を地面に下ろして遮断機をくぐらせてから、 華子の手をしっかりと握り踏切の外へと引っ張り出した。 華子はその力強い手を必死に振り払い、また線路内へ戻ろうとしたので、 陸は大声で言った。 「バカ野郎っ! すぐに鉄道会社の社員と警察が来るぞ! 面倒に巻き込まれたくなかったら、俺について来い!」 陸の大声で我に返りハッとした華子は、 陸に引っ張られるようにしてその場を後にした。
/348ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3680人が本棚に入れています
本棚に追加