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その瞬間、陸は走り出した。
緊急停止ボタンを押してももう間に合わない。
陸は遮断機を軽々と飛び越えると、
踏切内でうずくまる華子を抱き起こし、乱暴に肩に担いだ。
そして素早く電車が来ない方の線路へと移動する。
死を決意していた華子は、その瞬間何が起こったのか分からなかった。
気づくと、自分は誰かの肩に担がれている。
その時電車が、
「ファ―――ンッ、ファア―――――――――ンッ!」
と、長い警笛音を鳴らし続けた。
しかしブレーキはかけずにそのまま通り過ぎて行く。
間一髪だった。
先程叫んだ女性は、ホッとした様子で二人の方を見ていた。
陸は華子を担いだまま遮断機の手前まで行くと、
華子を地面に下ろして遮断機をくぐらせてから、
華子の手をしっかりと握り踏切の外へと引っ張り出した。
華子はその力強い手を必死に振り払い、また線路内へ戻ろうとしたので、
陸は大声で言った。
「バカ野郎っ! すぐに鉄道会社の社員と警察が来るぞ! 面倒に巻き込まれたくなかったら、俺について来い!」
陸の大声で我に返りハッとした華子は、
陸に引っ張られるようにしてその場を後にした。
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