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陸の手は華子の手首をしっかりと掴んでいた。
華子の手は小刻みに震えている。
華子は今頃になって、自分がしようとしていた事に気づき、
震えが止まらなくなっていた。
華子はパニックになったまま、
陸に引っ張られるようにして、今歩いて来た道を戻って行く。
陸は店まで戻ると、華子を連れて中へ入った。
そして、そのままカウンターへ向かうと、
卓也がびっくりした顔をしている。
「陸さん、その人......」
「ああ、ちょっと奥の休憩室を借りるぞ」
「あっ、はい......」
卓也は小刻みに震え顔面蒼白の華子を見て、
ただならぬ雰囲気を感じた。
あまりにも陸の真剣な様子に、それ以上何も聞けなかった。
客の一部が華子に気付いたようで、チラチラとこちらを見ている。
陸はそんな事にはお構いなしに、
バックヤードにあるロッカールーム兼休憩室へ、
華子を連れて入った。
華子を椅子に座らせると、陸はまたフロアへ戻り、
卓也に温かい飲み物を頼んだ。
そして再び戻って来ると、華子の前に座り華子をじっと見つめた。
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