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和やかな雰囲気の中で仕事をしていると、 あっという間に時間が経つ。 気付くと、午後の三時半を過ぎようとしていた。 華子はレジ、でおかわりの注文をしに来た女性の対応をしていた。 そこへ新たな客が入って来た。 華子が女性にコーヒーを渡し、今入って来た客の顔を見上げると、 そこには重森がいた。 驚いた顔をしている華子に向かって、重森は気さくに言う。 「また来たよ!」 「いらっしゃいませ」 華子は少しぎこちなく言った。 そして、 「ご注文はお決まりですか?」 「じゃあブレンドのMで」 「かしこまりました...」 華子は他人行儀に言ってから、 隣りにいた野村に注文を伝える。 そして、重森からクレジットカードを受け取ると、 会計作業を始める。 そのあまりにも事務的な対応に苛立った様子の重森が言った。 「なんだか今日はやけによそよそしいな...」 「そう? そんな事はないけど...?」 華子は平静を装って答える。 「まあいいや...仕事は何時まで?」 「なんでそんな事を聞くの?」 「いや、仕事終わりにちょっと話せないかなと思ってさ...」 「私はあなたと話す事なんてないわ...」 「俺の方があるんだよ!」 重森はそう言うと、華子の顔を睨む。 この表情には見覚えがあった。 大学時代、重森は気に入らない事があるといつも、 「俺の言う事を聞け!」 と言って、この表情になる。 重森は今も昔も変わっていない。
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