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『私ったら、こんな男の事を四年間も追いかけていたのね...ばかみたい』
華子はそう思うと、落ち着いた声で言った。
「でも、今更話す事は何もないのよ」
そして華子は、隣で心配そうにしている野村からコーヒーを受け取ると、
トレーに載せて、
「はいっ! あちらでごゆっくりどうぞ!」
と、重森の前に差し出した。
その儀礼的な言葉を聞いて、重森は愕然としていた。
昔の華子だったら、こんな冷たい態度は取らなかったはずだ。
『華子は変わった? あの頃の華子とは違うのか?』
重森は心の動揺を悟られないように、華子に言った。
「はいはいわかりました...退散いたしますよ!」
重盛はそう言うと、おとなしくテーブル席へ向かって歩き始めた。
そこで華子はフーッと息を吐く。
「大丈夫? あの人知り合いなの?」
隣りで野村が心配そうな顔をしている。
「すみません...実はあの人、大学時代に付き合っていた人なんです...」
「えーっ! そうだったのね! あぁ、だから...」
「?」
華子が不思議そうな顔をすると、野村は微笑んで言った。
「きっとね、三船さんが今とても幸せそうだから、後悔しているんじゃない? なんかそんな雰囲気がしたわ」
「後悔?」
「そう。オトコって、元カノが幸せになっているのを見ると、自尊心が傷つくらしいわよ。三船さん、今とっても綺麗だし、素敵な指輪もしているし、そういうのを見て、『俺は負けた』って思うんじゃない?」
野村の言葉を聞き、華子は更に不思議そうな顔をする。
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