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「そうなんでしょうか?」
華子は少し照れながら、何気なく野村の左手を見た。
すると、そこにはキラリと光る宝石が見えた。
いつもは結婚指輪しかしていない野村が、赤色の宝石がついた
指輪をしている。おそらくルビーだろう。
「あれっ? 野村さんの指輪も素敵! ご主人からですか?」
華子が聞くと、野村は満面の笑みで言った。
「うん。昨日結婚記念日だったのよ! 私、誕生石のルビーは持っていなかったから、夫が買ってやろうかって言ってくれてね...」
野村は恥ずかしそうに両手を頬に当てながら言った。
「それはおめでとうございます! ご主人優しいですね~!」
「うふっ、なんか急にね...三船さんの指輪ほど立派じゃないけれど、なんかこういうの買ってもらったの久しぶりで...それで嬉しくてつい着けて来ちゃった!」
「いえいえ、とっても素敵ですよ~! 結婚してからも指輪をプレゼントしてくれるなんて素敵だわ! そういうの憧れちゃう!」
それから、華子と野村はしばらく指輪談義を始めた。
野村は、婚約指輪を買いに行った際の話を華子に話してくれた。
華子は興味深げに耳を傾ける。
野村からは、一生に一度の事なんだから、
妥協をせずに、本当に気に入った指輪が見つかるまで
あちこち見て歩いた方がいいわよとアドバイスされた。
華子はそれをうんうんと頷きながら聞いている。
女性二人が、互いの指輪を見せ合いながら楽しそうに話している様子を、
重森は苛立った様子で眺めていた。
そして、憮然とした表情のまま、コーヒーをグイッと一口飲んだ。
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