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野村が先に仕事を上がると、 華子は大木と一緒に閉店作業を始める。 店内を見渡すと、いつの間にか重森の姿はなかった。 ホッとした華子は、仕事を続けた。 そして定時で仕事を終え、ロッカーの前でスマホを見ると、 陸からメッセージが届いていた。 「五時半くらいにそっちに行けるから、待ってて! 一緒に帰ろう」 華子は思わず笑顔になる。 エプロンを外し、帰り支度を終えてから、 本間の所で時間を潰そうと思った。 厨房へ行くと、既に本間が調理を始めている。 真鯛のカルパッチョの準備をしているらしい。 そこで、華子は本間から秘伝のソースを伝授される。 「大葉も刻んで入れるのね?」 「そう、それが隠し味だよ」 「粒マスタードも結構入れるのね...」 「味が引き締まるからなぁ...」 そう言って、本間はリズミカルにソースを混ぜ合わせると、 スプーンですくって華子に味見をさせる。 「美味しいっ! なんか爽やかなのにインパクトがあるわ!」 「だろう? 是非今度作ってみなさい。もうじき結婚するんだろう?」 本間は優しい表情で華子に言った。 「うん、そうよ。なんか急にそんな事になっちゃって...」」 華子は少し照れた様子で言った。 「君はきっといいお嫁さんになるよ。しょっちゅうここへ来ては料理を覚えて帰るんだからな!」 本間にそう言われると、なぜか安心する。 華子はどんなお祝いの言葉よりも、本間の言葉が嬉しかった。
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