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その時華子は、以前から気になっていた事を、
本間に聞いてみようと思った。
「あのね、一つ聞いてもいい?」
「うん? どうした?」
「私ね、父親がいないのよ。小さい頃に両親が離婚して、父の顔も覚えていないの。でね、もし本間さんが私の父親だったとしたら、娘に会いたいって思う? それとも会いたくない? 結婚するのを知りたいと思う?」
突然華子がそんな事を言ったので、本間は少し驚いているようだった。
しかし、しばらく考えた後、静かに言った。
「ご両親の離婚の原因にもよると思うが...やはりずっと会っていなくても、娘の事は気になるだろうなぁ...。もちろん、結婚が決まったら、お祝いしてあげたいと思うだろう...もし俺がその立場だったらなぁ...」
「そうなのね...」
華子が少ししょんぼりした表情をしている。
そこで本間が続けた。
「結婚を機にお父さんの事が気になるっていうのは、実は何かのサインかもしれない...チャンスを逃すんじゃないぞ!」
本間はそう言って華子にウィンクをした。
『チャンスを逃すんじゃないぞ!』
本間の言葉が頭の中にこだまする。
『彼の言う通りかもしれない...きっと今がチャンスの時なのかもしれない...』
華子は本間を見ると、
「うん、ありがとう!」
と笑顔で言った。
ちょうどその時、陸が厨房に入って来た。
「お待たせ!」
陸は華子に言った後、本間にも挨拶をした。
「今夜もよろしくお願いします」
「おうっ、まかせときな!」
本間はそう言って穏やかに笑った。
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