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『へぇ...カット席は二つだけなのね...もしかしたら彼女一人でこの店をやっているのかしら?』 華子はその時、ふと小さなイタリアン弁当屋の女性を思い出した。 彼女も同じくらいの年代で、一人で店をやっていた。 店内を見回すと、そこはまるで洒落た雑貨店のような雰囲気だった。 飾ってある絵や雑貨類もとてもセンスが良い。 置いてある家具類も素敵だった。 『室内も自分でリフォームしたのかしら?』 よく見ると、壁には所々色ムラが目立つ。 しかし、ペンキのムラやかすれ具合がなんともいえない味わいを生み出し、 店内を素敵に魅せていた。 その時、ドライヤーの音が止まり、 店主は客に、鏡で後ろの仕上がり具合を見せていた。 「大丈夫?」 「うん、バッチリ! 相変わらず、いい腕前ね!」 どうやら客は店主の知り合いのようだ。 そこで、客が椅子から立ち上がりこちらをくるりと向いた。 そこで、その客と華子の視線が合う。 すると二人は同時に、 「「アッ!」」 と声を上げた。 この店に客として来ていたのは、先ほど華子が思い浮かべた あの女性だった。 つまり、イタリアン弁当屋の店主の女性だったのだ。 「えっ! 凄い偶然~!」 「本当~! まさかこんな所で...」 二人は声を出して笑う。 「今日はお仕事お休みなの?」 「はい、そちらも? あ、今日は定休日でしたね!」 「そうなの」 女性はそう言うと、横で驚いた顔をしている 美容室の店主に向かって言った。
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