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カットを終えた華子は、鏡の中の自分から目が離せなかった。 『これが私.......?』 そこに映っていたのは、 今までのように、女の色気を前面に押し出しつつ気の強そうな雰囲気の華子とは異なり、 柔らかで清楚なイメージの華子がいた。 今回、華子は沙織のアドバイスにより、 額を全部出していた前髪のスタイルを変え、 前髪を降ろして斜めにカットしてもらった。 沙織に前髪を下ろしてみたらと提案された華子は、 前髪を真下に下ろすぱっつん前髪には抵抗があると伝えると、 沙織はこのスタイルを勧めてくれた。 どんな風になるかは、あまり想像がつかなかったが、 思い切って沙織に任せてみた。 そして出来上がった髪型がこれだ。 前髪を下ろしただけで華子は一気に若返り、 優しいイメージへと変貌した。 「どう? 私はすごく似合ってるなーって思うんだけれど...」 「今までこういう前髪にはした事がなかったんだけれど、すごくいいかも!」 「額を全部出すスタイルも似合っていたけれど、あれは必要以上に華子さんを大人っぽく見せ過ぎていたかも! こっちの方が、若々しくて清楚な雰囲気で、華子さんのイメージに合っているわ!」 『えっ? 今清楚って言った? 私、全然清楚なんかじゃないのに...』 華子は一瞬うろたえる。 しかし、その言葉が素直に嬉しかったので笑顔で返した。 「ありがとう。とても気に入ったわ!」 沙織のカットの腕前は見事なものだった。 おそらく華子が今までカットしてもらったスタイリストの中で 一番かもしれない。 この街で、そんなカリスマ美容師に出会えるとは思っていなかったので、 華子は驚くと同時に嬉しかった。
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