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華子が椅子から立ち上がり、バッグを手にすると、 沙織は店のドアに『close』の看板を下げてきた。 「うちはね、昼休みはちゃんと取るスタイルなの」 この店は、正午から午後二時まで二時間、しっかり休憩を取るらしい。 その分、夜は八時まで営業しているそうだ。 店のドアの鍵を閉めると、沙織は華子を二階へ案内した。 店の奥のドアを開けると、すぐに階段が見える。 階段の奥には、住居スペースの玄関があった。 階段を上がり二階へ行くと、すぐに廊下があり、ドアが三つ並んでいた。 「リフォームの時にキッチンは二階へ移動させたの。二階の方が日当たりがいいから! だから、一階は店舗とバスルームだけなのよ!」 沙織はそう説明してくれた。 そして一番手前のドアを開けて華子を中に入れた。 そこは、小さなキッチンがついたリビングダイニングだった。 キッチンはカウンター式で、リフォームの際に一新したのだろう。まだ新しい。 真っ白なキッチンは、清潔感に溢れている。 ダイニング部分には四人掛けのテーブルセットがあり、 壁にはチェストが二つ並んでいる。 そして、ベランダがある窓辺には、 ソファーとテレビが置かれていた。 室内の家具は全てポップな色彩の家具で揃えられ、 一階の店舗とは全く違うインテリアだった。 この部屋の壁は、白い漆喰で塗られていた。 おそらく、沙織が自分で塗ったのだろう。 漆喰を塗った刷毛の跡が残っており、それがまたいい味わいを出していた。 壁にはおしゃれなカード類がディスプレイされ、 置かれた小物もセンスがいい。 物が多い部屋だが、全てに統一感があるので嫌な感じがしない。 むしろ温かな雰囲気で居心地が良さそうだ。 陸のマンションを、 温かな雰囲気に変えていきたいと思っていた華子にとって、 センス溢れる沙織のインテリアは、 沢山の刺激を貰える素敵な住まいだった。
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