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「えっ? 美羽さん、もしかしてまだ彼の事......?」 「うん、好きよ! でも距離が離れているからどうにもならないわ...」 「そうだよねー、本当だったら、向こうにまだいて、彼と結婚していたかもしれないもんねぇ...」 「えっ? そうなの?」 華子が驚いて聞くと、美羽は言った。 「うん、うちの父がね、去年癌で亡くなってね...父がまだ闘病中に日本に帰って来たのよ。で、今は母親が一人だから、イタリアに戻る訳にもいかなくて...」 「私はね、お母さんはまだ若いんだから、イタリアに戻れって言ったんだけれどね! でもこの子一人っ子だから責任感じちゃってさ...優し過ぎるのよ、あんたは!」 沙織は美羽に向かって言った。 「そうだったのね...今は? 今は彼との交流はあるの?」 「うん、たまにネットを通じて話したりしてるわ! でもね、向こうには新しいガールフレンドが出来たみたい...それもかなり若い子!」 「若い子だと勝ち目ないーって、この子リアクションを起こさないのよ! もうさ、日本に来て一緒にレストランをやりましょう! くらい言ってこっちに呼べばいいのにね!」 「相手の方もシェフなの?」 「そう、同じ店で働いていたから...」 美羽はそう答えた。 華子は、女友達の恋バナというやつを、あまりした事がなかったので、 なんとアドバイスをしたらいいのか分からなかった。 しかし、美羽はまだ真剣に相手の事を思っている。 その気持ちが痛いほど分かった。 なぜなら、美羽の様子は、 華子が重森と別れた時の気持ちに似ていたからだった。 その時、美羽が華子に聞いた。 「華子さんの彼はどんな人?」 美羽は指輪を見ながらニッコリ微笑んで聞いた。 「あっ、私も気になるぅ~! だって素敵な指輪をしているんだもの!」 沙織もそう言って、華子が答えるのを期待した目で見つめる。 「どんなって...うーん、なんて言ったらいいんだろう?」 華子は素直になんと答えてよいのか分からなかった。
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