22

8/17

3681人が本棚に入れています
本棚に追加
/348ページ
歩きながら、華子はドキドキしていた。 気を遣う事もなく、マウントを取る必要もない、 ただ気軽にお喋りを楽しめる... そんな場所にいたのは初めてだ。 『恋バナ』が楽しいなんて知らなかった。 そして、夢に向かって頑張る同年代の二人から大きな刺激も受けた。 華子はなぜか、身体中からパワーが溢れて来るのを感じていた。 この嬉しさを誰かに伝えたい。 その時思い浮かんだ人物は、ただ一人だった。 『りく...』 華子はそう思と、バッグからスマホを取り出す。 すると、着信音を消していたので気づかなかったが、 陸からメッセージがきている事に気づいた。 華子はすぐにメッセージを読む。 「美容院はどうだった? 気に入りそう?」 途端に華子の表情が笑顔に変わる。 メッセージを返すのももどかしい。 今、華子は陸の声が聞きたかった。 そこですぐに電話をかける。 陸はすぐに電話に出た。 「どうした? 今終わったのか? 遅かったな......」 その落ち着いた声を聞いて、華子は安心感に包まれる。 「うん、陸、あのね......」 そこから華子のお喋りは止まらなかった。 電柱の陰に立ったまま、華子は陸へ、今あった楽しい出来事を報告する。 時折、電話口に陸の「うん、うん」という優しい声が漏れてくる。 春の穏やかな日差しを浴びながら、 華子の電話は、いつまでも続いた。
/348ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3681人が本棚に入れています
本棚に追加