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その後、華子が夕食の支度をしている時、陸が帰って来た。 インターフォンが鳴ると、新しいエプロンをつけた華子が、 スリッパの音をパタパタとさせながら玄関へ向かう。 そして、鍵を開けると、入って来た陸に言った。 「おかえりさない」 「ただいま...」 陸は靴を脱ぎながら、前に立つ華子を見た。 その瞬間、少し驚いた表情になる。 「どうぉ? ちょっと雰囲気が変わったでしょう?」 華子は髪を手で触りながら自慢げに陸に言った。 「え? ああ、すごく素敵になったね。なんか雰囲気がガラッと変わったな...」 「でしょ? さーどこが変わったでしょう?」 華子はニコニコしながらクイズを出す。 陸は華子を見つめながら、以前とどこが違うかを考え始めた。 そこで、「あっ!」と呟く。 「前髪か?」 「ピンポーン! さすが陸、有能だわ!」 華子は満足気に答えると、踵を返してまたキッチンへ戻って行った。 陸はしばらくその場に立っていた。 なぜなら、華子のイメージがガラッと変わっていたので、 驚いていたからだ。 『前髪一つ変えただけで、あんなにも女は変わるのか?』 そのくらい、華子は以前とは全く違っていた。 上品で、優し気で、清楚な雰囲気を漂わせていた。 陸は、華子の身に着けている新しいエプロンにも気づいていた。 おそらく、今日買ったのだろう。 その清楚な雰囲気のエプロンは、今の華子にとても良く似合っていた。 『まるで新妻みたいじゃないか...』 陸はそう思うと、思い切り笑顔を浮かべた。
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