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「へぇ~、それはおめでとう! で、どんな男なんだ?」
『あんたには関係ないでしょう?』
と言い返してやりたい気分だったが、
華子はなんとか思いとどまると、
逆に婚約者がいかにハイスペックな男であるかを、
重森に知らしめる事にした。
「そうねぇ...すっごく優しくて包容力があって、ガッチリした体型のイケメンよ! 私には勿体ないくらい...」
華子はうっとりした表情で言った。
それはあながち嘘ではない。
華子は心の底から、陸の事をそんな風に思っていたのだ。
華子の惚気を聞いた重森は、心が無性に乱れていた。
しかしそんな感情を、華子に悟られたくなかったので、
なるべく平静を装いながら言った。
「そんなハイスペックなヤツなら、今度会わせてくれよ...」
重森は、華子の言葉が嘘だと思っているのだろう。
からかうような口調で、そう言った。
『なんで昔の男に今の恋人を合わせなくちゃいけないのよっ!』
華子は思わず鼻息が荒くなりそうになったが、
なんとか落ち着いてからこう答えた。
「フフッ、それは無理よ。彼、仕事も出来る人なの。だからきっと時間が取れないと思うわ...」
華子は、この時ばかりは嘘をついた。
陸が有能であるというのは本当の事だが、
有能であるがゆえに、時間管理もきっちりしている。
だから、従業員に無理な残業を強いる事もないし、
ほとんどのスタッフは、いつも定時で帰る事が出来た。
そして、そんな余裕のタイムスケジュールなのに、
売り上げは常に安定しており順調だ。
そんな所からも、陸のビジネスマンとしての有能さは、
証明されていた。
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