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「帰ったんじゃなかったの?」
「君とちゃんと話しをするまでは帰らないさ」
重森はあっけらかんとした様子で言った。
そんな重森に対し、華子は呆れて物も言えない。
大学時代の四年間、
重森はこんな風に待ち伏せをするようなタイプではなかった。
どちらかというと、当時人気者だった重森の方が女子学生に待ち伏せされる事の方が多く、
それに対し重森の方が、かなりうんざりしていたではないか?
『この人どうしちゃったの?』
華子は急に嫌な予感がしてきた。
重森は、そんな華子を気にする様子もなく、
「今日は車で来てるんだ! ちょっとドライブがてら車の中で話そう」
「ちょ、ちょっと待ってよ! 話す事なんて何もないわ! だって私達はとうの昔に別れたのよ! 今更なんの話があるって言うのよっ!」
「だから、それをこれから話すんだよ! 通りでそんな大声を出すなよ! いいから、こっちへ来いよっ!」
重森は華子の腕を力強く掴むと、
半ば引きずるようにして、停めてある車の方へ引っ張り始める。
「ちょっ、やめてよっ、やめてってばっ!」
「騒ぐなよっ、ほらっ!」
重森はそう言いながら、華子の目をキッと睨む。
その冷たい視線に、華子は思わずぞっとした。
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