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華子が無事に車から脱出すると、
陸は重森の腕を離した。
その瞬間重森がふらつきながら言った。
「なんだよお前っ!」
「華子の婚約者だ。大事な恋人が車に連れ込まれそうになっていたんだ、慌てるのは当然だろう!」
「フンッ、連れ込むなんて大袈裟な!」
「そんな事を言っていいのか? 今のは、場合によっては立派な犯罪だぞ!」
そんな陸の言葉を聞いて、重森はまだ余裕の様子だった。
「ハッ? 昔俺達は付き合っていたんだぞ! 四年もな! 昔の女をドライブに誘ったからって、犯罪になんかなる訳ないだろう?」
重森は「どうだ!」と言った顔をして言い返す。
「でも嫌がってる彼女を無理やり連れ込もうとしてたじゃないか! それって結構ヤバくないか?」
陸はニヤッと笑って重森の目を見つめる。
そんな陸の目力の強さに、一瞬重森が怯む。
「とっ、とにかく、華子は納得して俺について来ようとしていたんだ。だから、決して無理やりとか犯罪とか...そういうんじゃないからなっ!」
「私、納得なんかしていないわっ!」
「俺にもそう見えたぞ...」
「フンッ! とにかく違うもんは違うんだっ!」
重森はあくまでも認めない。
その時、誰かが声をかけて来た。
「陸っ! どうした? なんかトラブルか?」
三人が声の方を振り向くと、そこには見覚えのある顔があった。
その男性は、華子が自殺未遂をした日に店にいた客だった。
華子と陸が店を出る際、陸にDVDについての話をしていたのを、華子は覚えていた。
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