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すると、重森が血相を変えて慌て出した。
「い、いやっ、俺は何も...本気で...じゃなくて...ちょっと冗談でふざけただけっすよ...嫌だなぁ...本気にされたらたまったもんじゃないなぁ...」
重森はそう言って頭を掻きながら、
さり気なく運転席の方へ移動し始める。
そんな重森へ、大野が強い口調で言った。
「ちなみに、この車はお兄さんのかいっ? これはれっきとした駐車違反だなぁ... 今日の所は見逃したるけど、俺の仲間が来て切符を切られる前に、早く車を動かした方がいいぞぉ~!」
大野はそう言ってガハガハと笑った。
重森は思い切り罰の悪そうな顔をしてから、
慌てて運転席へ乗り込むと、
すぐにエンジンをかけて車を発進させた。
かなり動揺していたのか、
ウィンカーをつけたつもりが、
間違えてワイパーを動かしてしまう。
無情にもそのワイパーは、しばらくキコキコと動き続けたままだった。
そんな重森の車に向かって、さらに大野が言った。
「おにーさん、今日は雨は降ってないでやんすよー!」
大野の言葉を聞いた陸と華子は、思わずプッと噴き出していた。
しかし、顔は笑いながらも、
華子の手は陸の手をしっかりと掴んでいた。
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