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身支度を整えた華子がリビングへ行くと、 陸がソファーから立ち上がった。 「素敵だよ...じゃあそろそろ行くか!」 「うん!」 華子は笑顔で頷いた。 実家へ行く前に、商店街へ寄ってアップルパイを買いに行く事にした。 駐車場へ車を停めてから、 二人で店に入る。 陸は一番大きくて値段の高いアップルパイを買ってくれた。 祖母はリンゴが好きだからきっと喜ぶだろう。 包んでもらっている間、 店内に漂う甘い香りを思い切り吸い込む。 ただそれだけの事で、華子はとても幸せな気持ちになった。 それから二人は、華子の実家を目指した。 実家までは一時間もかからずに着いた。 華子の実家は、高級住宅街の中にある。 昔からこの辺りに住んでいる旧家が多い地域で、 大豪邸が建ち並んでいる。 その中に、華子の祖父母が住む実家があった。 華子の祖父は、いくつもの料亭を経営しているだけあり、 かなり立派な門構えの、日本家屋だった。 「随分立派な家だな...」 「広いだけよ...かなり古いし...」 確かに家には歴史が感じられたが、庭の植木は綺麗に手入れされ、 この家の持ち主がそれ相応の人物である事は、外から見ても分かる。 その凄さは、陸の想像以上だった。 空いている駐車スペースに車を停めると、 二人は車を出て門の前まで行った。 華子はすぐに門の横にあるインターフォンを押す。 すると、高齢の女性の声が聞こえて来た。 「華子、お帰り!」 声の主は、おそらく華子の祖母だろう。 その時門の鍵がカチッと解除された音がしたので、 華子は門を開けて陸を招き入れた。 「こっちよ...」 華子はそう言って陸の前を歩き、玄関まで案内した。 玄関まで続くアプローチからは、立派な日本庭園が見える。 奥には池もあるようだ。 『自宅も料亭みたいに立派だな...』 陸はその見事な日本庭園に、思わず目を奪われていた。
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