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その時、華子の頭の中にこの言葉が浮かんだ。
『捨てる神あれば拾う神あり』
思わず華子はプッと笑いそうになる。
しかし、男はそんな華子の事には気づく様子もなく続けた。
「社宅だから経費になるしな」
その言葉を聞き華子は不審な顔をした。
この男は、この店の従業員ではなさそうだ。
「えっと、あなたはこの店の......?」
「オーナーだ」
「従業員だとばかり思ってたわ! それは失礼しました」
華子はそう言うと、軽く頭を下げた。
「バイトっていうのは、バーで働けっていう事?」
「いや、違う。この店は昼間はカフェとして営業しているんだ。だから日中のカフェで働いてもらう」
「夜のバーの方が時給がいいんじゃないの?」
「いや、そんなには変わらないよ。それに、自殺しかけた奴は、夜よりも昼間働いた方がいい。健全な精神は、規則正しい生活に宿るからな!」
男はそう言ってフッと笑った。
男のいちいち偉そうな口調にイラっとした華子は、
すぐに言い返した。
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