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一通りの挨拶が済むと、華子が祖母に向かって言った。 「今日は洋間の方がいいわ」 「分かってますよ。和室は若い人には堅苦しいものねぇ...」 そう言ってから、長い廊下の二番目のドアを開け、 中へどうぞと陸に言った。 「失礼します」 陸が部屋に入ると、そこはソファーセットが置かれた 応接室だった。 昭和の懐かしいような雰囲気が漂っている。 しかし、置かれている家具や絨毯は一流品ばかりで、 壁に掛かっている絵や陶器の置物などは、 有名作家や価値のある骨董といった類のものだった。 アンティークや骨董に精通している陸は、 その品々を見て、思わずため息が漏れそうになる。 応接セットの一人掛けの椅子には、 白髪で眼鏡をかけた老人が座っていた。 陸が部屋に入ると、老人は立ち上がり言った。 「よくいらっしゃいました! お会いするのを楽しみにしていましたよ」 その男性は華子の祖父の宗太郎(そうたろう)だった。 宗太郎は目尻に皺を寄せながら満面の笑みだった。 陸は宗太郎の前に行くと、 「初めまして、日比野陸と申します。本日はお時間をいただき、ありがとうございます」 そう言って、深々と頭を下げた。 そんな陸の様子を、宗太郎はニコニコと見つめている。 「華子の祖父の三船宗太郎です。まあ、堅苦しい事はなしで...どうぞおかけになってくつろいで下さい」 「はい、失礼いたします」 陸はそう言うと、ソファーに腰を下ろした。 その横に、華子もちょこんと座る。
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