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陸の隣に座りながら、華子は不思議な気持ちだった。
自分が生まれ育った家に、陸がいる。
それが不思議でならない。
『私は夢でも見ているの?』
ついそんな気持ちになる。
そこへ、祖母の菊子がお茶と茶菓子を持って来た。
四人分のお茶を出し終えると、
祖母も宗太郎の隣へ座る。
その頃合いを見計らって、陸が話を始めた。
「私は今、華子さんと結婚を前提にお付き合いをさせていただいております。
本日は、華子さんの育ての親でもあるおじい様とおばあ様に、二人の結婚の許可をいただきたく、ご挨拶に参りました。どうか、結婚をお許しいただけますよう、お願い申し上げます」
陸はかしこまってそう告げると、深々と頭を下げた。
祖父母は陸の様子を、目を細めながら嬉しそうな顔で見つめていた。
華子はというと、陸がきちんと祖父母に挨拶をしてくれた事が嬉しくて、
感無量だった。
陸が頭を上げると、宗太郎が笑顔で言った。
「私の特技はですねぇ、一目見ただけで相手がどういうい人物か分かる事なんですよ。あなたを見た瞬間、すぐに分かりました。華子を任せても大丈夫だと...。まさか華子がこんなにしっかりした方を捕まえるなんて思ってもいなかったので、そこはびっくりしましたがね」
宗太郎はそう言って声を出して笑った。
そして今度は真面目な表情になると、陸に言った。
「どうか華子の事をよろしくお願いいたします」
宗太郎はそう言って、陸に深々と頭を下げた。
それと同時に、隣にいた菊子も頭を下げる。
それを受けて陸は、
「ありがとうございます。大切にさせていただきます」
と答えると、もう一度頭を下げた。
『おじいちゃん...』
華子は祖父がすぐにOKしてくれたので、感動していた。
人を見る目に厳しい祖父が、今会ったばかりの陸に、
あっさりと結婚の許可を与えたのだ。
何事にも厳しい祖父から、あっという間に結婚の了承を得た陸の凄さを、
華子は改めて凄いと思った。
『フフッ...陸ったら凄いわ...』
思わず笑みがこぼれる。
祖母の菊子は、そんな笑顔の華子の事を、感慨深げに見つめていた。
そして、陸に向かって話し始める。
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