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「もう既にご存知かもしれませんが、この子の母親の弘子は、昔離婚をしましてね...それから華子はここで育ちました。一度、この子が高校生の時に弘子が見合いをして再婚したのですが、またすぐに別れてしまって...。 そんな事もあり、この子はなかなか落ち着ける居場所がなかったんですよ。それに弘子が育児放棄気味な母親でしたので、いつも淋しい思いをさせてきました。 私達夫婦が、もっと娘の弘子を厳しく育てていればこんな事にはならなかったのではと、今ではとても反省をしております...。本当に華子には申し訳なかったと思っているんですよ」 それを聞いた華子は言った。 「ううん、おばあちゃん達のせいじゃないわ!」 華子の言葉を聞いて、菊子は「ありがとう」という顔をして頷いた。 そこで陸が口を開く。 「ご家庭の大体の事情は彼女から聞いておりますので...で、華子のお母様は今どちらに?」 陸の質問に、困った顔をしながら菊子が答えた。 「それがね...今、フランスにおりまして...」 「フランス?」 華子が声を張り上げた。 びっくりし過ぎて、つい大きな声を出してしまったのだ。 「そうなのよ...なんかフランスと関係した仕事をしている男性とお付き合いしているとかで? まぁ、きっとまた振られてすぐに日本へ舞い戻って来るでしょうけれどね」 菊子は肩をすくめながら、諦めたような表情で言った。 「フランスですか...だったらフランスへご挨拶に伺った方がいいですよね? それとも、男性とご一緒なら行かない方がいいのかな.....?」 「弘子の事は気にしないで下さい。もし日本にいたとしても、母親としての役割は一切期待出来ませんから......まあそのうち日本へ舞い戻ってくるでしょうから、その時にでも...」 「わかりました...そういう事なら...」 陸はそう言うと、菊子が入れてくれたお茶を一口飲んだ。
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