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キッチンへ行くと、今しがた届いたのだろうか?
料亭の本店から届いたと思われる、
仕出しの料理が四人分並んでいた。
「あれ? 店のお料理、頼んでくれたの?」
「そうよ。二人ともお夕飯を食べて行きなさい!」
「わぁ...店の味は久しぶりだわ! 嬉しい!」
華子はそう言って、お重の蓋を開けて中を覗き込む。
そんな華子を見ながら、菊子が言った。
「華子、陸さん、素敵な人ね!」
「うん」
華子は少し恥ずかしそうに頷いた。
「あんなに素敵な人と、どこでお知り合いになったの?」
思わず華子はドキッとする。
まさか自殺を止めてもらったなどとは、祖母には口が裂けても言えない。
そこでいつものように答えた。
「陸のお店に行って知り合いになったの」
「そうなのねぇ...うちも料亭でしょう? で陸さんもお店を四つ? やっていらっしゃるんでしょう? どちらも飲食業...不思議なご縁ね...」
菊子はそう言ってフフッと笑った。
そこで華子は聞いた。
「そう言えば、お母さん、フランスにいるって本当?」
「ええ。二ヶ月前に突然いなくなってね...そうしたら一ヶ月ほどしてからハガキが来たわ。今パリにいますって...おばあちゃん、もう呆れて何も言えないわよ...」
菊子は疲れた様子で言った。
久しぶりに会った祖母は、なんだか少しやつれたように見えた。
もうこんなにも高齢なのに、娘の弘子に振り回され続けていて、
見ていて不憫になってくる。
そこで華子が言った。
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