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その後、四人での夕食会が始まった。 宗太郎が経営する料亭の本店から届いた料理を、 陸は何度も美味しいと言って、嬉しそうに食べていた。 この日車で来ていた二人だが、 宗太郎がどうしても陸と酒を飲みたいと言うので、 陸は宗太郎に付き合う事にする。 その代わりに、陸の車は明日マンションまで運ばせるからと 宗太郎が言った。 帰りは二人でタクシーで帰りなさいと、 先に華子にタクシー代まで渡す。 祖父の宗太郎と陸はすっかり意気投合し、 話題は自衛隊の話から、互いが経営する店についての話題で 盛り上がり始める。 ご機嫌な様子の宗太郎の大きな笑い声を聞きながら、 華子は祖母にこっそりと言った。 「おばあちゃん、私ね、お父さんに会ってみたいの...」 それを聞いた菊子は、一瞬ハッとした顔をする。 「居場所はね、陸が探してくれるって言ってるの。だから、何か手掛かりになるような事があれば、全部教えてくれないかしら?」 菊子はしばらくじっと黙ったままだった。 それから、フーッと息を吐いてから言った。 「そうね......無理もないわね。華子は何も知らないんですものね。知らないと、余計に知りたい気持ちが溢れてくるわよね...だから私は弘子に言ったのよ...きちんと子供には離婚の経緯を説明すべきだって...なのにあの子は、一切夫の事は口にしないでって、いつも癇癪を起していたわ.......」 菊子はそう言って、淋しそうに微笑んだ。
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