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子供の頃、華子が父親に関する質問を祖母にしても、
祖母は知らないの一点張りだった。
高校生になってからも再度聞いてみたが、
知らない、わからないの答えしか返ってこない事に、
当時の華子は違和感を覚えていた。
やはり、祖母は母弘子から口留めされていたのだ。
「じゃあおばあちゃんは、知っているのね? どうしてお母さんが離婚したのか...そしてお父さんがどんな人だったのかを...」
「もちろん知っているわ。だって、華子が生まれた時一緒に病院に会いに行ったのよ。病院のガラス越しで眠っているあなたを、慶太さんと一緒に見ていたんだから...」
祖母は懐かしそうな顔をして言った。
「慶太さん? お父さんは『慶太』っていうの?」
華子が興奮した声で言ったので、男性二人がこちらを見る。
どうやら、途中から二人の話を聞いていたようだ。
そこで宗太郎が言った。
「そろそろ華子に話してやってもいいんじゃないか? この子ももう立派な大人なんだから...」
「はい、分かっていますよ。いつかは話そうと思っていましたからね。私達だって、もう先が長くはないですから...」
祖母はそう言うと、
「ちょっと待っていなさい」
そう言って、応接室を出て行った。
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