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しばらくしてから、菊子は一冊の古いアルバムを持って来た。
そして、椅子に座りページをめくると、
華子にそのアルバムを渡した。
そこには、まだ一歳にも満たない華子を抱いて、
微笑む男性の姿があった。
男性はその時、おそらく30歳前後だろう。
黒いタートルネックのセーターにジーンズを履いた
カジュアルな服装で、
華子を抱きながら、カメラに向かって嬉しそうに微笑んでいた。
「この人って....?」
「それがあなたのお父さんよ。名前は、長谷川慶太。
華子が生まれた時はちょうど30歳だったわ。弘子が24歳の時に、
慶太さんと結婚したの。
結婚してちょうど一年後に、あなたが生まれたのよ」
「この人が...私の...お父さん......?」
華子はその写真をじっと見つめる。
そのアルバムのページには、他にも何枚かの父の写真があった。
どの写真も華子を抱きながら、満面の笑みを浮かべている。
その表情からは、娘が生まれた嬉しさでいっぱいという思いが
伝わってきた。
写真から目が離せないまま、華子が祖母に聞いた。
「お父さんは...どうしてお母さんと別れちゃったの?」
菊子は、一度フーッと息を吐いてから
静かに話し始めた。
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