24

12/20
前へ
/348ページ
次へ
しばらくしてから、菊子は一冊の古いアルバムを持って来た。 そして、椅子に座りページをめくると、 華子にそのアルバムを渡した。 そこには、まだ一歳にも満たない華子を抱いて、 微笑む男性の姿があった。 男性はその時、おそらく30歳前後だろう。 黒いタートルネックのセーターにジーンズを履いた カジュアルな服装で、 華子を抱きながら、カメラに向かって嬉しそうに微笑んでいた。 「この人って....?」 「それがあなたのお父さんよ。名前は、長谷川慶太。 華子が生まれた時はちょうど30歳だったわ。弘子が24歳の時に、 慶太さんと結婚したの。 結婚してちょうど一年後に、あなたが生まれたのよ」 「この人が...私の...お父さん......?」 華子はその写真をじっと見つめる。 そのアルバムのページには、他にも何枚かの父の写真があった。 どの写真も華子を抱きながら、満面の笑みを浮かべている。 その表情からは、娘が生まれた嬉しさでいっぱいという思いが 伝わってきた。 写真から目が離せないまま、華子が祖母に聞いた。 「お父さんは...どうしてお母さんと別れちゃったの?」 菊子は、一度フーッと息を吐いてから 静かに話し始めた。
/348ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3685人が本棚に入れています
本棚に追加