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陸はペンを受け取ると、 「日比野です。今日から一泊お世話になります」 そう言ってから、チェックインの用紙に必要事項を記入する。 「日比野様ですね、ご予約承っております。確か当ホテルには初めてお越しでいらっしゃいますよね?」 「はい...」 「こちらへはご旅行で?」 男性は軽く世間話を取り入れながら、 軽くコミュニケーションを図って来た。 それに対し陸は、 「あ、いえ、実は...」 陸が本題を話そうとした瞬間、華子が遮るように男性に言った。 「実は.....私の父がこちらで働いていると伺い、お会い出来ればと思い訪ねて来たのですが...」 「お客様のお父様が......?」 男性はしばらく考え込んだ様子だった。 しかし、華子の顔を見て、 「アッ!」 という顔をした。 「失礼ですが、奥様のお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」 男性は華子が陸の妻だと思っているようだ。 しかし、今はそんな事はどうでもいい。 華子はスルーしたまま答えた。 「三船華子と申します。父の名前は長谷川慶太です」 そこで、男性はやっぱりという表情をした。
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