3687人が本棚に入れています
本棚に追加
陸はペンを受け取ると、
「日比野です。今日から一泊お世話になります」
そう言ってから、チェックインの用紙に必要事項を記入する。
「日比野様ですね、ご予約承っております。確か当ホテルには初めてお越しでいらっしゃいますよね?」
「はい...」
「こちらへはご旅行で?」
男性は軽く世間話を取り入れながら、
軽くコミュニケーションを図って来た。
それに対し陸は、
「あ、いえ、実は...」
陸が本題を話そうとした瞬間、華子が遮るように男性に言った。
「実は.....私の父がこちらで働いていると伺い、お会い出来ればと思い訪ねて来たのですが...」
「お客様のお父様が......?」
男性はしばらく考え込んだ様子だった。
しかし、華子の顔を見て、
「アッ!」
という顔をした。
「失礼ですが、奥様のお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
男性は華子が陸の妻だと思っているようだ。
しかし、今はそんな事はどうでもいい。
華子はスルーしたまま答えた。
「三船華子と申します。父の名前は長谷川慶太です」
そこで、男性はやっぱりという表情をした。
最初のコメントを投稿しよう!