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「今日はお前に会いたいって言う人を連れて来たんだ」
「俺に?」
慶太が不思議そうな声で言った。
「どうぞ...」
高瀬はそう言って、華子にベッドの傍に来るよう促した。
華子は震える足で、一歩ずつ前へ進んで行く。
父はどんな顔をするだろうか?
父は一体なんと言うだろうか?
華子の目には、既に涙が浮かんでいた。
そしてその表情は、かすかに緊張で強張っている。
慶太は不思議そうな顔をして、近づいて来る人物を見上げた。
そして、その瞳が華子の瞳を捉えた時、
慶太はみるみる驚きの表情へと変わっていった。
「華子かい.......?」
「お父さん......?」
「本当に華子なんだね......いやぁ驚いたなぁ......いつの間にかこんなに大きくなって...もうすっかり大人のレディじゃないか...」
その言葉を聞いた途端、華子の目から涙がこぼれ落ちた。
「お父さん.......お父さん...お父さん......」
華子はそう言うと、ベッドに座っていた慶太の肩に顔をつけて、大声で泣き出した。
そんな華子の背中を、慶太が優しく手でとんとんと叩く。
華子は泣きじゃくりながら、背中を叩く父の優しい手の感触が、遠い昔のあの頃の記憶を呼び戻すような......そんな気がしていた。
陸と高瀬は微笑みながら目くばせをすると、
二人を残してそっと病室を後にした。
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