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それからしばらくして、華子は少し落ち着きを取り戻した。 涙を拭いてから、父と話しを始めた。 今日ここへ会いに来た経緯。 母・弘子からは、父は勝手に出て行ったと聞いていた事。 今回婚約する事になり、父の事が気になり、改めて祖父母に詳しい話を聞き、居場所が分かった事等を説明した。 父はそれを聞いて、よく探してくれたねと涙を流しながら華子に言った。 「東京を出てから、ずっと北海道に?」 「ああ、そうだよ。道内のホテルを何ヶ所か回った。で、最近ここに異動になったんだ」 「病院へは救急車で?」 「ああ。たまたまこの病院に心臓の名医がいたので助かったよ。リハビリをして体力が回復したら、退院しても大丈夫だそうだ」 「そうなのね、それは良かったわ...」 華子は安心した様子で答えた。 それから二人は積もる話をした。 父の27年間。 そして華子の27年間。 あまりにも長いその期間の出来事を、 二人は互いにかいつまんで話した。 もちろん華子は、銀座のクラブや愛人の話は 内緒にしておいた。 父に心配はかけたくなかったからだ。
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