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「先ほどそこにいたのが、婚約者の陸君か?」
「そうよ。後で連れて来て紹介するわ」
「華子の事を心配そうに見ていたな。優しい人なんだね...」
「うん、陸はすごく優しいわ...」
華子は照れたように言った。
「そうかぁ...華子もお嫁さんになるんだな...時が経つのは早いな...」
「うん...でもお父さんに会えたから、これからは時々会いに来るわ」
「そうか...そりゃあ嬉しいな...長生きしないとな」
「そうよ...これからは会えなかった時間の分まで、親孝行させてよ...」
「ハハハ、嬉しい事を言ってくれるな...」
慶太はそう言うと、さりげなく人差し指で目尻を拭った。
華子が「親孝行」という言葉を言ったので、
それがグッと胸に刺さった。
その時、高瀬が陸を連れて戻って来た。
「親子の涙の再会は終わったかい?」
からかうように高瀬が言った。
「ハハハ、もう俺は幸せ過ぎて、うっかりあの世に行ってしまいそうだよ...」
慶太はそんな冗談を言う。
「おいおい、死ぬのはまだ早いぞ!」
高瀬が慌てて言ったので、その場に笑いが広がる。
そして慶太は、陸を見ると口を開いた。
「陸君、君が私の居場所を探してくれたと華子から聞きました。本当にありがとう。感謝してもしきれないです」
慶太はそう言って頭を下げた。
それを受けて、陸も頭を下げてから言った。
「華子の望みを叶えてやりたかったんです。華子はお父さんにとても会いたがっていましたから...」
「ありがとう。君のような人が、華子の傍についていてくれるなら安心です。どうか末永く、華子の事をよろしくお願いします」
慶太は姿勢を正してからもう一度深々と頭を下げた。
「はい、必ず幸せにいたします」
陸はそう言って、もう一度頭を下げた。
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