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その時、白衣を着た医師と看護師がやって来た。 「長谷川さん、先生の診察ですよ~!」 スラッと背の高い美人の看護師が、にこやかな笑顔で慶太に声をかける。 その横にいた医師は、 慶太の周りに集まっている三人を見て、おや? という顔をしている。 「長谷川さん、今日は人気者ですね。何か楽しいイベントでもあるんですか?」 医師が冗談交じりに言う。 「岸本先生! 今日はねぇ、びっくりするような嬉しい見舞客が来てくれたんですよぉ~! 私の娘の華子です。それと婚約者の陸君!」 慶太は嬉しそうに二人を紹介した。 その時、横にいた看護師が、 「キャッ!」 と叫んだ。 「長谷川さんの生き別れたお嬢様? うわぁ~、再会できたのですねぇ、良かったぁ~! おめでとうございます!」 美人の看護師は、興奮して言った。 「ハハッ、瑠璃子さん、今までは君に娘役を頼んでいたが、本物の娘に会えたので、もう代役を頼まなくても済みそうだよ。今までありがとう!」 慶太はそう言って、瑠璃子という名前の看護師にウィンクをした。 すると、看護師は、 「まぁ、残念! もうちょっと親子ごっこを楽しみたかったのに!」 そう言ってフフッと笑った。 すると、岸本医師も笑みを浮かべながら言った。 「お嬢さんが見えていたのですね! それは嬉しい日になりましたね! じゃあ折角だから、お嬢さんにお父さんの病状の説明をさせてもらおうかな? お二人は、今日はまだお時間大丈夫ですか?」 岸本医師は、華子と陸に向かって聞いた。 その質問に、陸が 「大丈夫です」 と答えると、 「じゃあ、面会が終わったら、ナースステーションにひと声をかけて下さい。説明はそんなに時間がかかりませんから...」 岸本医師はそう言うと、 慶太に当てていた聴診器を外し、看護師に何かを指示してから、 「じゃあ親子水入らずでごゆっくり...」 笑顔でそう言うと、看護師と笑顔を交わしながら 病室を出て行った。
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