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「今の二人もね、婚約しているんだよ。彼女を見て、私は華子の事をいつも思い出していたんだ...今頃どうしているかなってね...そうしたら、華子も婚約していたと知って驚いたよ!」
慶太はそう言うと、陸と華子の顔を交互に見比べてから、
笑顔でうんうんと頷いていた。
帰り際、華子は父に言った。
「退院してからしばらく大変でしょう? もし良かったら、私がしばらくこっちにいるけれど?」
華子の申し出に、慶太は驚いているようだった。
「ハハハ、嬉しい事を言ってくれるね...でも大丈夫だ。今、部屋は違うが高瀬と同じマンションに住んでいるんだよ。だから、何かあれば高瀬が助けてくれるから大丈夫だ! 華子は自分の事だけを考えなさい!」
慶太は穏やかに言った。
華子は父の言葉を聞いて、チラッと高瀬を見る。
すると高瀬も、
「私も、10年前に妻を亡くして、それからは一人なんですよ。互いに一人者同士、ぼちぼちとやっていきますから、心配しなくても大丈夫ですよ...」
そう言って笑った。
「でも...」
「本当に大丈夫だから。あっ、その代わり一つだけお願いがあるんだ...華子が結婚する時に、花嫁姿の写真を送ってくれないか?」
「お父さん! 写真じゃなくって、式に招待するから本物の花嫁姿を見に来てよ! それまでに身体をしっかり治しておく事! 約束よ!」
華子が思いがけない事を言ったので、慶太の瞳に涙が溢れる。
しかし、それをグッとこらえながら、
「私を招待してくれるのかい? そりゃあ光栄だな...それまでにしっかり治しておかないとな...」
慶太はそう言うと、こぼれてきた涙をそっと指で拭った。
そんな慶太の様子を、陸と高瀬は微笑みながら見つめていた。
帰り際に華子と陸は、岸本医師から病状の説明を聞いた後、
高瀬と一緒にロッジへ戻った。
岸本医師の話によると、手術でしっかり不安要素は取り除いたので、
もう心配ないでしょうという事だった。
それを聞いた二人はホッと安堵した。
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