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「じゃあ契約成立だな。後日雇用契約書にサインしてもらうから! それと、これ......」 陸は華子の肩に掛けていたジャケットのポケットに手を突っ込み、 名刺入れを取り出すと、中から名刺を一枚引き抜き華子に渡した。 華子は受け取った名刺を見る。 そこには、 『Land Co. Ltd. 代表 日比野陸』 と書かれていた。 『社長なんだ...』 華子がそう思っていると、 「君の名前は?」 「三船華子よ」 「三つの船に、『ハナコ』は『お花』の『花』?」 「違うわ。『華やか』の『華』よ!」 「フッ、そっちの方が君にぴったりだな」 そう言って可笑しそうに笑った。 初めて見た陸の笑顔に、華子はドキッとした。 笑うと途端に優しい顔になる。 陸は椅子から立ち上がって言った。 「じゃあそろそろ行くか」 「えっ?」 「ついて来い」 華子は陸が社宅となるマンションまで連れて行ってくれるのだと分かり、 慌てて立ち上がる。 そして二人は部屋を出て、店のフロアへと向かった。
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